小さな藩の家老が生き残るためにやったことは?
十一人の賊軍の犠牲だった。
登場人物 十一人の賊軍
山田孝之(あんにゃ・政)
聾啞の妻を新発田藩の武士に女郎扱いされたので、武士を殺害した罪。
山田孝之さんが出るものは面白い、ハズレなし。
仲野太賀(鷲尾兵士郎)
同盟軍とともに戦うことを希望していた。
直心影流の使い手
どのシーンも気迫の演技だった。
佐久本 宝(ノロ)
罪人の政を自分のあんにゃと間違えて逃がした罪
花火師の家系
鞘師里保(なつ)
女郎、子おろしをさせられた仕返しに放火した罪/火付け
尾上右近(赤丹)
博打での詐欺行為
小柳亮太(辻斬)
何人も殺害した罪
映画初出演らしい。
見事な切りっぷりが良かった。
岡山天音(おろしや)
藩の開業医の息子、医学を学ぶためにロシアに行こうとした罪
密航
松浦祐也(三途)
一家心中を企てた罪
一ノ瀬 楓(二枚目)
好きになったのが武家の奥様だったので罪
姦通
本山 力(爺っつあん)
強盗殺人
長州出身の剣術家
強かった。
爺っつあんのファンになった。殺陣が素晴らしい。
千原せいじ(引導)
坊主
檀家の娘に手を出した罪
登場人物その他
阿部サダヲ(溝口内匠)
新発田藩の家老
野村周平(入江数馬)
溝口家の婿養子
慶応四年(1968年) 戊辰戦争の只中
薩長、率いる新政府軍は朝廷を擁護し、
自らを官軍と名乗った。
徳川存続を願う旧幕府軍を賊軍と断じ、力尽くて屈服させていた。
長岡城の戦いで賊軍は官軍に制覇された。
だが奥羽越列藩同盟軍(賊軍)は新潟湊奉行所に陣地を作って、
新発田藩の城代家老 溝口(阿部サダヲ)に出兵を頼んでいた。
新発田藩はこれまでも日和見でどっちつかずだった。
今もそうだ。
(まだ子供の若君は官軍の方につくといってきかなかった。)
明日、同盟軍は軍を率いて新発田を訪れると言ってきた。
そして官軍の使者も明日やってくると言ってきた。
溝口は考えた。
新発田藩の武士4人と罪人10人で決死隊を作り、
それを藩の境にある砦に置き、
官軍を新発田に入れないようにしてくれと頼んだのだ。
溝口は罪人は働きにより無罪放免にすると約束した。
同盟軍が新発田を出発したら、
のろしを上げるので、
戻ってきてよいとのことだった。
夜明け前、決死隊は砦に到着した。
美しい朝焼けだ。
(長岡藩の印を付けさせていたことから、新発田藩は関係がないと官軍に思わせたいとの思惑があった。)
一日目 慶応四年七月二十二日
同盟軍が新発田城に到着した。
溝口は
同盟軍の参謀や総督が若君に会いたいと言っているのに、
具合が悪いとなんとか言い逃れをした。
決死隊は
官軍を迎え撃つ準備を整えていた。
なつとノロは薪を拾っていた。
のろは黒い水を見て喜んでいた。
(この時点では黒い水の正体はわからない。)
その夜、政が逃げ出す。
(政は新発田藩の武士に妻を強姦されているので、他の人より恨みは強いのだ。)
ひとり逃げると無罪放免がなくなるので、
みんなが追いかけた。
すると官軍がもうすぐそこまで来ているのが見えた。
みんなは咄嗟に隠れた。
しかしノロが動いてしまい、官軍に見つかった。
辻斬が先手をきって、
切り合いが始まった。
(辻斬は人を殺すのが楽しいのだ。)
決死隊もダメージを負ったが
官軍は長岡城に退散。
官軍先鋒総督府参謀山縣狂介は
長岡藩の足軽がまだ新発田藩の助けをするくらいの余裕があること等に
不信感を抱いていた。
二日目 慶応四年七月二十三日
同盟軍の斎藤は若君に会うまでは出兵しないとのたもうた。
溝口は困った。
決死隊はのろしを待ちわびていた。
暇なので武士の荒井は赤丹に
いかさま博打をしかけられて怒ってしまう。
荒井の怒りを宥めるため、入江は水辺に連れてきて事情を話す。
それを偶然なつが聞いてしまった、
「役目が済んだらあいつらは口封じをする」
その時、
官軍らの攻撃が始まった。
まだ生き残る長岡藩の足軽らを全滅させようとのことだ。
すごい大砲だ。
鉄砲の攻撃もある。
官軍正虎は軍を連れて決死隊の櫓門の中に進んだ。
決死隊は煙を出した。
煙で視界を悪くし、官軍に攻撃する作戦だ。
入江は官軍正虎に刺された。
ノロがほうろく玉を放った。
それは官軍の足軽をやっつけた。
そしてもう一つのほうろく玉は政が投げた。
政の投げたほうろく玉は辻斬がキャッチし、回りに集まった官軍の足軽らと爆発した。
(辻斬は死んだ。)
一応の勝利を治め、決死隊は戻った。
櫓門の前に正虎が見世物にするよう、縛り付けられた。
入江の話を聞いていたなつとそれを聞いた政は
入江に詰め寄った。
最初から新発田藩は同盟軍を裏切り、
官軍に入るとの考えだと言った。
長岡藩の旗を掲げていたのは
新発田が官軍に攻撃しては都合が悪いからだ。
決死隊は同盟軍が新発田を去るまで
官軍を足止めするだけの道具だった。
無血開城する作戦だった。
兵士郎もそのことを知らず、怒った。
兵士郎は最初から同盟軍に合流して戦うのが筋だと思っていたからだ。
家老自らの虚言、
「ふざけんな」
決死隊は怒りに震えた、
武士の荒井は向かってきた三途を刺した。
そして罪人らを侮辱した。
荒井の背中を入江が刺した。
入江は必ず家老を説得し無罪放免にしてみせると頭を下げた。
土下座した。
すまねがった。
兵士郎は刀を収め、出て行った。
その頃、溝口家老の娘は入江の元に向かっていた。
一方若君は新発田藩の寺に隠れていた。
城を同盟軍に乗っ取られていることで、溝口は叱られるが
官軍に味方するにはこの方法しかないと訴える。
3日目 慶応四年七月二十四日
物置で、ノロがほうろく玉を作っている。
官軍が「人質正虎を解放して門を開け、官軍になれば許してやる。」と言ってきた。
決死隊は次々と刀や銃を捨てて官軍の方に向かった。
(寝返りが早い。)
入江はここに残ると言った。
兵士郎は一物を含んだ顔で銃を拾い、叫びながら人質の正虎の頭を撃った。
兵士郎は新発田藩の人々を守ることにしたのだ。
砦を守らなければ、
新発田は戦火にまみれ、
城下は焼け落ちるろが!
おめーらのトトもカカも生まれ育った村も
みんなのうなっかもしんねんだぞ!
おれたちが守るしかねえんぞ。
正虎を撃たれた官軍は攻撃を開始した。
決死隊も戦う準備を始めたが、
政はまた逃げた。
なつが気がつき、跡を追うと、誰かが来た。
それは入江の妻加奈だった。
加奈はここで戦う覚悟だった。
政は官軍の元に向かい、橋を渡っていた。
新発田藩では
同盟軍が若君に接見を求め続けていた。
家老は同盟軍に兵を出すことを拒否した農民を殺すと首を斬り始めた。
激しい雨の中、政は官軍に入れてくれと荒井の首を持っていた。
政が新発田の言いなりにはなりたくない
と言ってしまった。
官軍に砦にいるのが新発田の者だとわかってしまった。
政は官軍正鷹に殺されそうになったが、そこへノロがやってきた。
ノロは焚き火の中にほうらく玉を投げ、政はそれを見て咄嗟に頭を下げた。
爆発した。
政とノロは橋を戻ろうとした。
決死隊は吊り橋を破壊するため、ほうろく玉を設置したが、
雨足が強く、着火が出来ずにいた。
二枚目は自分の包帯で炎を大きくし、吊り橋に向かった。
母ちゃん、すまねえ
二枚目は言って、大爆発が起きた。
橋は落ちた。
入江は加奈に刀を託した。
そして力が抜け、逝ってしまった。
そこへ、ノロをかついだ政がやってきた。
ノロは死んでいた。
新発田城。
まだ同盟軍は出兵していない。
若君が見つかり、全ての計画が漏れていた。
砦ではノロの死を悲しんでいた。
しかし、ノロは息を吹き返した。
ノロは政が生きていたことを喜んでいた。
その夜、罪人たちは焚き火の回りで歌って踊った。
加奈は罪人の放免を入江の願いとし家老に伝えると誓った。
ノロが黒い水の正体をみんなに言った。
黒い水は油だった。
敵陣のちょうど真上に油の井戸があるのだ。
決死隊はすぐに行動した。
吊り橋は破壊されているが、縄をつたったのだ。
そして油の出どころを見つけた。
新発田城にいた同盟軍は溝口の切腹を待っていたが、
官軍が攻めてきたということで、慌てて出て行った。
溝口は若君のはからいで切腹を中止した。
砦、
官軍兵は座ったまま眠っていた、
決死隊は火をつけた。
ただ全滅とはいかず、
おろしやは撃たれ、右手を焼かれた。
おろしやは医者を続けることはできないとやぶれかぶれで官軍に向かっていった。
死んでしまった。
爺っつあんは元長州藩 槍術指南 小柴彦八郎と名のった。
槍を手にし
義において
お国に逆らい奉る(たてまつる)と言った。
爺っつあんは2人を相手にした。
官軍に腕を切られつつも
脇に挟んだ槍でやり返した。
爺っつあんも死んだ。
兵士郎の危ないところを政が鉄砲でやっつけた。
4日目 慶応四年七月二十五日
加奈となつは新発田城に着いた。
加奈はなつに小判を渡す。
父親の溝口に詳細を話す。
家老は加奈の申し出を聞き入れた。
官軍が城に来ていた。
山縣は合印をしたものを見せ、何かを詰め寄った。
砦は
良い天気だった、
政はまた逃げようとしていた。
兵士郎は政に別れを告げた。
政が走っていると
新発田兵が砦に向かっていた、
政はそのまま進もうと迷ったが、砦に戻った。
砦に残った連中が新発田に戻る準備をしていた時、
新発田兵が来た。
彼らは迎えに来たのではなく、殺しにきたのだ、
引導と赤丹は新発田兵に撃たれて死んだ。
兵士郎は怒り新発田兵の前に出て行った。
すると家老の溝口が
殿が
兵士郎には情けをかけよとの言葉がありとのたもうた。
兵士郎はやおら刀を手に縛り取れないようにした。
溝口に向かって、
貴様のような卑怯者を許すわけにはいかねろ
と言った。
溝口はなら罪人同様処分するまで
兵士郎は
わしは十一人目の賊ら
と言った。
溝口は攻撃を開始した。
新発田藩の兵士が向かっていくが、
兵士郎は
すさまじい剣さばきだ。
兵士郎は切られながらも必死に戦った。
政は物置にほうらく玉を取りにいった。
溝口は兵士郎に戦いを挑んだ。
それを受けたのかと思ったが、いきなり鉄砲で兵士郎を撃った。
そして幾人もが兵士郎を切りつけた。
政は、愕然とした。
政は高見櫓に上がり、火打石で爆弾に火をつけた。
追ってきた兵士は政を刺した後、爆弾で死んだ。
みんな死んでしまった。
同日、新発田藩の若君は官軍の総督を招いた、
そして、贈り物をした、
首桶の中には兵士郎の首が入っていた。
新政府軍は新発田藩の協力により
新潟湊を攻め落とした。
新発田藩は周辺国に怒りを買ったが
城下での戦を回避し
城と民を守った。
溝口が家に戻ると
妻が泣き叫んでいた、
加奈が白無垢姿で自害していた、
そばには入江の遺髪があった。
許してくれ
こうするしかなかった
と溝口は泣いた。
新潟古町の政の妻、さだの元に
なつが小判を持ってきた。
さだは政の手ぬぐいを手に泣き崩れた。
政の分まで幸せになるんだ。
そう、なつは伝えた。
城下町には
めでたいめでたいめでたいな
とチンドン屋が騒いでいた。
感想
罪人らの生き様、死に際に、感動した。
密航までしてロシアで医学を学ぼうとしたおろしやに強い信念を感じた。
手を怪我した時、これで医者にはなれないと絶望し、死んでいった。
辻斬は殺すのが本当に楽しそうだった。
爆弾を持って、大勢の敵方足軽とともに吹っ飛ぶ姿に潔さを感じた。
三途はみんなの気持ちを代表して武士荒井に文句を言い、切られてしまって無念だったと思う。
先に死んだ家族に会えるといいな。
二枚目が橋の上で爆弾に火を着け、母親に詫びた時は泣けた。
爺っつあんは強かった。
赤丹
賭博のいかさまでも死罪になってしまう時代もおっかないと思った。
詐欺だと懲役刑だろうに。
政は生き抜いて、妻と母親の元に帰れるかと思ったが、
最期は新発田藩の兵士郎を放っておけなかった。
人情だ。
兵士郎は家老の裏切りにどんなに悔しかったか、無念だった。
私も悔しかった。
結果的に家老は
若君の希望を叶えたし、
新発田藩の人々や土地を守ったということになった。
代償は自分の娘の加奈とお腹の子ども、そして婿養子の入江だ。
多分妻にも嫌われ、その後の生活は苦痛だったろう。
家老は娘との約束を守らず、藩を守ったのだ。
江戸時代の最期の方の物語は面白かった。
家老の娘が身籠ったまま白無垢を着て自害する
自殺はいけないが、とても感動的だった。
お読みいただきありがとうございました。