怒り//何度観てもすごい映画!今回徹底考察してみた。どちらが本当の犯人の言葉なのか。素性がわからないことの恐怖と人間の心の危うさ。

映画鑑賞

東京都八王子市で夫婦が殺害された

7月。

八王子市に住んでいた夫婦が殺された。

刑事の北見と南條らが捜査にあたった。

暑い日だった。

男は日雇い仕事で現場に向かった。

だが、日にちを間違っていた。

ある家の前で座り込んだところ、

その家の妻がかわいそうに思ったのか麦茶を差し出してくれた。

犯人は他人を貶めることで、なんとか理性を保っているような人間だったから、

自分が哀れまれたことに怒りを覚えた。

それで妻を絞殺してしまった。

犯人は妻を殺した後、

妻を風呂まで運び、

生き返らそうとした。

そんなことしてグズグズしてたら、

夫が帰宅。

夫も殺害してしまう。

夫婦は生き返らないし、

犯人は自分に怒りを覚えたと思う。

それとも生き返らない夫婦に怒りを覚えたのか。

壁にの字を血で書いた。

シャワーを浴び、

家の食べ物を食べ、

帽子をかぶり自転車で逃亡する姿を誰かに見られた。

犯人は山神一也と断定されたが、逃亡していた。

新宿2丁目で目撃情報があり、

女装しているかもしれないとニュースで放送されていた。

それからまた夏が来た。

千葉 田代哲也(松山ケンイチ)

槙 洋平(渡辺謙)はNPOの樽本と一緒に歌舞伎町の風俗を訪れた。

娘の愛子(宮崎あおい)を迎えに行くためだ。

愛子は3ヶ月前に家出していた。

風俗での愛子は

客の要望になんでも応えてしまう女だった。

客がエスカレートし、

まるで壊れてもいいおもちゃのようだった。

駅まで迎えにきた親戚の明日香(池脇千鶴)は父親に心配させた愛子を怒るのだが、

洋平はきつくは怒れないようだった。

洋平が働く漁場で、

2ヶ月前から田代哲也(松山ケンイチ)という男が働いていた。

身元不明で素性が知れないことから、噂になっているらしい。

愛子は洋平にお弁当を届けている内に田代と知り合い、仲良くなった。

そして、同棲したいと洋平に言った。

洋平は心配になり、田代が以前働いていた軽井沢のペンションに行った。

そこでは高橋という名前で働いていたことから

愛子にもその話をする。

愛子は自分が田代から聞いた話をした。

田代は大学生の時、親が借金を残して死んだため、借金取りから逃げている生活をしていると

打ち明けた。

愛子は田代を信じてくれと訴えた。

2人は一緒に暮らすようになる。

東京 直人(綾野剛)

愛子がイヤホンで聞いていた東方神起の曲が流れると

舞台は東京に移る。

プールのあるお洒落な場所で男性ばかりがパーティーをしている。

藤田優馬(妻夫木聡)は仲間の誘いを断り、

母親がいるホスピスを訪れた。

親孝行の息子に見える。

別の場所、

男性ばかりのコミュニティで優馬は直人と知り合う。

直人の人となりに好感を持ち、ふたりは一緒に暮らすようになる。

優馬は仕事終わりに真っすぐ家に帰るようになった。

直人は母親のホスピスにも訪れ、面会をするようになる。

母親は直人の右頬にある3つのほくろを可愛いと言っていた。

優馬は

母親が死んだ後、一緒のお墓に入るものいいかもしれないと思っていた。

ある日、

直人の仲間2人の家が空き巣被害にあった。

優馬は中目黒のカフェで直人が女の子と会っているのを見た。

直人は自分ではないと嘘とついた。

2人は険悪な雰囲気になった。

(ここで、洗面所で髪の毛を切っている映像が流れるがそれは直人でない、山神一也だと思う。)

直人は行方不明になった。

優馬は直人に何度も電話するのだが、出てはもらえなかった。

そして、ニュース。

八王子市夫婦殺害の犯人山神一也が逃亡していることと、モンタージュ写真が流れていた。

優馬はパソコンで事件を検索してみる。

似ている。

そして、タイミング良く?駒沢警察から電話。

優馬は怖くなった。

直人のことは知らないと言って、電話を切った。

優馬は焦って直人の持ち物を処分した。

沖縄 田中さん(森山未來)

小宮山 泉(広瀬すず)は同級生の知念辰哉(佐久本宝)に無人島/星島に連れていってもらう。

泉がひとりで島を探検していると

廃墟に男がいた。

頭上には戦闘機が轟音を出して飛んでいる。

男は泉に

「ここにいることは誰にも言わないでくれ」と言った。

1週間後、泉はまた星島を訪れた。

荷物が入っているリュックがあることから、田中に何か差し入れしたのかもしれない。

男は田中と名乗った。

泉は1週間誰も寄り付かない島にいる田中を心配していた。

田中と泉は打ち解けた感じだ。

一方、

同級生の辰哉は泉を映画に誘う。

那覇では辰哉の父が運動に参加していた。

嘉手納基地や辺野古基地の問題を旗や太鼓を叩きながら、周囲に訴えている。

辰哉は

仕事を放って運動に参加している父親に怒っていた。

父親がそういうことをしていても今さら何かが変えられるわけがないと思っていた。

土曜日、映画やショッピングの帰り、

泉は那覇で偶然田中を見かけ、

3人は一緒に食事する。

泥酔した辰哉はフラフラとどこかに行ってしまい、

それを探す泉は米兵らが集まる暗い道に入ってしまう。

泉は米兵に手を引っ張られ、公園でレイプされた。

辰哉はそれを見たが、怖くて震えるだけだった。

そこに

「ぽりーす」「ぽりーす」と叫ぶ声が聞こえ、米兵達は逃げた。

辰哉は泉の元に駆け寄り、電話をかけようとするが、

泉は

「誰にも言わないで」「誰にも言わないで」と繰り返した。

その後の泉は

私は強くない。私が声を上げても何も変わらない。と

被害届を出すことを拒んだ。

考えは変わらなかった。

辰哉は泉に対して何のチカラにもなれないことが悔しかった。

東京 八王子市夫婦殺害の容疑者 山神一也

警察は山神の自宅を捜査する。

流し台にはカップヌードルの食べ終わった容器に割りばしが刺さったものが多数あり、

テーブルには飲み終えた缶やボトルが並べられている。

壁一面に世間に対する自分の考えが書いてある紙が貼られている。

電車遅延で駅員をドーカツ

顔真っ赤 ウケる

人身事故なんだから

仕方ねーだろ オッサン

ファミレスで店員に苦情

ブツブツブツブツ

かっこ悪 バカ夫婦

家で食え 家で

刑事は思いたったら書かずにはいられない

のかもしれないと言っていた。

八王子市夫婦殺害事件の新たな情報

山神容疑者が新潟市内で整形手術を受けていたことが判明した。

整形前は鋭い一重まぶただったものを二重まぶたに

下唇を薄くし

右頬には縦に3つ並んだホクロがある。

3人の男に良く似ている。

沖縄 田中

辰哉はひとりで星島を訪れ、田中と話すようになった。

そしていつの間にか

田中は辰哉の家の民宿を手伝うようになっていた。

要領が良く、辰哉の家族にも溶け込んでいた。

泉の事で悩んでいる辰哉の相談相手にもなっていた。

「沖縄で米兵が女の子にひどいことをする。

どうしたらいいのか。」

「1番苦しんでいるのは女の子、本気で怒っている。それを他人にわかってもらうのはできない。」

2人の意見は一致していた。

ある朝、田中が民宿のお客様のバッグを外に投げ出していた。

辰哉に戒められたが、

田中の気持ちはおさまっていなかった。

田中は辰哉に泉ちゃんのことを知っていると打ち明けた。

辰哉は驚きながらも何を知っているのかと田中に問う。

田中は話し出した。

那覇で2人と別れた後、宿に戻ろうとした。

でも偶然米兵が泉ちゃんのことを付けていたので

自分もつけていった。

泉ちゃんが強姦されていても

怖くてぽりーすと叫ぶことしか出来なかった。

逃げ出した米兵を追って、自分もタクシーに乗ったが、基地に入ってしまった。

慌てて、また公園に戻ったら、辰哉がいて

泉ちゃんが誰にも言わないでって何度も言っていた。

泉ちゃんに対して何もできないことに苛立ちを覚えているのは田中も辰哉も同じだった。

その夜、田中は民宿を破壊しだす。

2階に上がり、屋根から逃走した。

千葉 田代くん

不安を拭えない洋平は明日香の元を訪れる。

田代が殺人犯に似ているということを話した。

後日、明日香は愛子に話をした。

洋平の自宅に雨に濡れた愛子が立っていた。

愛子は田代に正面からぶつかったのだ。

「田代君は人を殺していないよね?いないんだったら待ってるからすぐ帰ってきて!」と言ったが

田代は帰って来なかった。

愛子は警察に電話した。

捜査の刑事がやってきた。

東京 早川という男

大阪の土木現場で山神と面識がある男が別件で逮捕された。

早川はあいつが犯人だと断定した。

そして

山神から聞いた話を話し出した。

事件を起こした日、

山神は派遣会社から指定された現場に向かった。

郊外の住宅地は代り映えのしない住宅が続く。

いくら歩いても現場は見つからない。

そこで会社に電話すると

その現場は先週で今日は違うところだと言われ、詫びもなかった。

ある家の前で休んでいたところ、

たまたまそこの奥さんが帰ってきた。

そして、山神に同情したのか飲み物をくれた。

山神は人をこき下ろすことで平常心を保っている人間だ。

それなのに、相手から同情、哀れんでしまわれたら

どうにかなってしまう人物だ。

ただ山神は奥さんを殺しておきながら、生き返らせようとした。

そんなことしていたから、だんなさんも帰ってきて、また殺してしまった。

山神を憐れんだから殺されたと言わんばかりだった。

千葉 田代君

愛子と田代が暮らすアパートで取り調べが行われた。

その結果、田代は山神ではなかった。

田代は柳本康平という人間だ。

洋平は膝から崩れ落ちた。

愛子は慟哭。

愛子は田代を信じてあげられなかった自分への怒りがとても激しい。

田代とは二度と会えないかもしれないのだ。

しかし、

その後、田代が愛子に電話をくれた。

田代はここに戻ることになった。

東京 直人

優馬が中目黒のカフェに行くと、

以前直人と一緒だった女の子薫がいた。

優馬はいてもたってもいられなくて、カフェで女の子に声をかける。

女の子はポツリポツリ話し出した。

直人とは同じ施設で育った。

血のつながりはないが、兄弟だと思っている。

もともと心臓が悪くて薬でだましだまし生きていた。

駒沢警察が電話してきた日、

直人は公園の茂みに倒れていた。

直人らしいっていうか、、、

優馬はすべて納得がいったようだ。

泣くことを抑えきれなかった。

彼もまた直人を信じてあげられなかった自分への怒りを人目をはばかることなくあらわしていた。

沖縄 星島 田中

辰哉は星島に行く。

田中はまた星島に渡ったと思ったのだろう。

ちょうど、田中はハサミで右頬のほくろを取ろうとしていた。

辰哉が来ると悪びれもしなかった。

(辰哉の家を破壊したことを)

田中は語る。

目を見ると自分のことをどう見られているかわかってしまう。

こいつ俺の事すごく気に入ってるなあとか。

見抜ける。

なんでそんなに簡単に見ず知らずの人間を信じられるのか。

辰哉に問う。

何で俺の事信じられるわけ?

米兵が泉をつけ狙っていることは最初から知っていた。

だけどどこかの親父がポリースと叫んだから米兵は逃げていった。

最後までちゃんとやれよ。

それを聞いた辰哉は信じられないという顔でかたまっていた。

同情するふりなんていらない

俺はお前の味方だからさ

と言って辰哉を突飛ばした。

そして、田中は逆立ちをした。

辰哉は泉のことを思い出していた。

誰にも言わないでと言った時の泉を。

辰哉は落ちていたハサミで田中を刺した。

田中はフラフラと島を歩く。

辰哉は

米兵にヤラれてる女を見た

知ってる女だった

女気絶

ウケる

コンクリートに石で書かれた文字を見つけ、

一心不乱に石で消した。

星島 泉

指名手配されていた山神容疑者を刺した少年(辰哉)のニュース、

少年は山神だとは知らなかったと供述

「信じていたから許せなかった」と繰り返していた。

泉は星島に向かった。

そこで

米兵にヤラれてる女を見た

知ってる女だった

女気絶

ウケる

の文字が石でこすられていた。

2階には怒の一文字があった。

美しい砂浜で泉は叫ぶ。

感想① 田中編

泉ちゃんはレイプされていた自分を助けもせず震えていた辰哉を責めなかった。

田中もまた見ていただけでポリースと叫んだだけだ。

辰哉は

辰哉と同じ人間が存在すると考えた。

だって自分はそばにいたのに何も出来なかったんだ。

それで、泉ちゃんの苦しみを分かち合えると思ってしまった。

田中が山神一也だったわけだ。

田中が語った

泉ちゃんの話はどちらが真実だったのだろう。

泉ちゃんは田中のお気に入りだったから、

ポリースポリースと叫んだのが真実か

それとも

米兵が狙っているところからつけて、見物してたんだろうか。

他の親父がポリースとか言って邪魔しやがってということも言ってたし。

田中の性格は早川という男やアパートの貼り紙からわかるような気がする。

思いたったら、どこかに書いておく

同情されたり憐れまれたりするのが嫌い

それで人を殺す時もある、

人の目を見ると、相手が自分をどんな風に見ているかわかってしまう。

辰哉が田中に会いに星島へ行った。

辰哉は本当に田中のことを信じていたんだと思う。

田中は泉ちゃんの怒りを表わしていたと思ったのかもしれない。

だから自分ちの民宿を破壊されたことを責めもせず、

ただ田中から自分が納得する言葉を聞きたかった。

あくまでも田中は自分の味方だと思っていたのだ。

泉ちゃんのことを理解し合える唯一の人間が田中だった。

それを田中はおちゃらけた。

米兵、逃げないで最後までやれよと言った。

お前だって見てただけだったと言われたことも悲しかった。

それが

「信じていたから許せなかった。」という言葉に繋がるのかなって思った。

田中を刺した時は

辰哉の怒りが頂点に達したのだと思ったけど、

裏切られたっていう気持ちがそうさせたんだと後から思った。

田中が

民宿で客のスーツケースを投げたことも

民宿を破壊して逃げたことも

泉ちゃんの苦しみを知っていたから

どうしようもない感情がそういう行動に出たって思おうとした。

辰哉は田中を刺した後、コンクリートに書かれた文字を見つけた。

ウケる

泉ちゃんのことをそう表した。

辰哉は石でこすってそれを消そうとした。

泉ちゃんは星島のこのこすられた文字を見て、

辰哉が「誰にも言わないで」という自分の願いを守ってくれてると確信した。

辰哉はそのために殺人を犯したんだ。

辰哉の怒りには泣けた。

そして泉はそのこすられた文字を見て、

「たつやくん」と言った。

そこですべて察した泉が叫ぶシーンは胸を打った。

感想② 田代くん

素性の知れない男が自分の娘と暮らしている。

娘はちょっと知能が低い。

それはとっても心配だろう。

田代くんの話したことは真実だったので、

信じてあげさえすれば、何もなかったかもしれない。

田代がちょっと山神一也に似ていたのも偶然だった。

ちょっと足りない愛子さえも

人を殺したというのはいけないことで、警察に行くべきだと思っている。

愛子は田代に殺してないなら帰ってきてと

正面からぶつかるが、

田代はこれまで借金取りから逃げているものだから、迷惑かけちゃいけないって

申し訳ないって気持ちになっちゃう。

愛子にそういうことを言わせてしまう自分に非ががあるって考えちゃう。

警察が捜査して、田代の本名がわかる。

もちろん山神一也ではない。

愛子が慟哭する。

田代を疑ったから愛子は大事な人を失った。

それはすべて自分のせいなのだ。

洋平は

愛子みたいな子は幸せになれないって思ってた気持ち、父親なのに愛子の噂をそのまま放置してた自分に怒りを覚えた。

何もせず流れに任せた。

今度はそうじゃない。

田代くんを呼び、3人で幸せになる方法を見つけると思う。

感想③ 直人

直人は何も知らずに死んだと思う。

優馬から山神じゃないかと疑いをかけられたことも知らない。

優馬は直人を信じてあげることが出来ず、公園で倒れ死んでいた最期の直人に会うことも出来なかった。

警察から電話が来た時の自分を許すことは出来ないだろう。

母親に続いて直人も失った。

優馬はこれからどうやって生きていくのだろう。

心配だ。

感想 まとめ

東京・千葉・沖縄で素性の知れない男たちが

そこで知り合った人に指名手配容疑者と疑われた。

何度も繰り返し鑑賞する中で、

人との信頼関係っていうのは危ういものなんだと学んだ。

李 相日監督、凄い方ですね。

お読みいただきありがとうございました。

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