誰も救えなかった。
そもそも誰かが救えると思ったら大間違いだ。
ひとりひとりの思い上がりが罪のない子どもの命を奪った。
息子は知りたいと思う気持ちにストップはかけられなかった。
関係者全員がそれぞれの罪を後悔していても、祈りを捧げても失った命は戻りません。
誰も救われない物語。
隅田川の溺死体は濱仲辰司でした。
第一部 亮輔と賢剛
辰司が溺死体で発見。
亮輔の父辰司は、警察官として長く公務に励み退官しており、地域の名士でした。
殴られた痕があったことから殺人事件として捜査本部が発足しました。
久松署管轄内に流れついた辰司の捜査は亮輔の親友芦原賢剛が担当することになりました。
辰司は
夜8時ごろ家を出て、飲み屋「かげろう」に向かい、その後襲われたのだと思われました。
亮輔は
人から恨みをかうような人物ではなかった、父親には何か秘密があったのではないかと考えました。
母親から辰司が変わったきっかけがあるとしたら、
親友賢剛の父芦原智士の自殺だと聞かされました。
亮輔の知らない父を知るために
亮輔は父親を知る人を訪ねることにしました。
その途中、亮輔は
東武伊勢崎線の高架線の柵に血痕を見つけ、賢剛に知らせます。
亮輔は勤めていた会社が倒産し、無職でした。
そんな亮輔を辰司はいつも「お前は運がない」と言っていました。
亮輔は大病し、受験に失敗し、婚約寸前で破棄され、そのたびに「お前は運が悪い」と言われてきました。
それに反発していましたが、
辰司は
運にさえ恵まれていたら、もっと充実した人生を送れていたかもしれないということを言いたかったのではないかと思い直していました。
賢剛の捜査/「かげろう」の女将:「濱仲さんは自分の正義を持っている人だった。でもそれが濱仲さんを苦しめていた気がする。濱仲さんが死ななければならなかったのは、正義を貫いたせいかもしれない」
賢剛の捜査/辰司の友人 瀬戸:「辰司は薄い壁一枚を隔てて接しているようなところがあった。その壁はお前の親父さんが死んでから辰司が自分の周りに作ったような気がするんだよ」
亮輔の聞き込み/賢剛の父親とは中学時代に野球部で先輩後輩関係の佐島:亮輔が賢剛の父親の自殺から辰司が変わってしまったということから、親父のことを知りたいという気持ちを汲んで話しをしてくれました。地上40階建てのビルをさし、地域住民の顔ぶれが変わり、下町気質を有さない人が増えたとも。
賢剛の捜査/捜査一課の岸野とバブル期の誘拐事件を語ります。誘拐された子どもは東芳不動産勤務の親を持ち、結局金は戻らず、子どもは生きて帰れなかったのです。賢剛の父親はこのビルの建設が始まる前に死んだのでいい思い出はありません。
第二部 辰司と智士
辰司は常住坐臥警察官であるべきとの考えの持ち主です。
常住坐臥(じょうじゅうざが)とはいつも・四六時中と言う意味です。
帰宅途中、小学校以来の先輩後輩にあたる小泉の引越に通りかかりました。
小泉は住んでいた土地を売り1億円近い金額を手にしたと噂されていました。
少し歩くと老人が濡れ縁に腰をかけていて、小泉の話になりました。
老人は「地元への愛情もへったくれもなく冷たいもんだよな」と言いました。
同じようなことを方々から散々聞かされていました。
芦原智士は高卒で居酒屋に勤めていました。
真面目だが不器用な智士はいつも怒られています。
仕事帰り、小さい頃から知っている田村夏恋に偶然あい、一緒に帰りました。
辰司が非番で外に出ると、知り合いに相談を持ち込まれます。
家の前に腐った生ゴミ袋が3つも置いていかれているのです。
ですが、届け出を出すことくらいしかアドバイスできません。
またも歩き始めると掴みあっている男らに気がつきました。
片方は小室翔(おむろしょう)という知人でした。
小室はあいつがゴミを捨てているというのですが、証拠もなく暴力を振るったらお前が悪者になると、諭しました。
智士と翔は同じ居酒屋で働いていました。
翔は智士が板長のイジメにあっていることに憤りを覚え、智士に訴えます。
智士は自分が我慢すれば諍いが避けられるならその方がいいと思ってしまう人間でした。
翔には20年も思っている女性がいたのですが、他の人と結婚してしまい、その上引越してしまったのです。
理由は地上げでした。
辰司は非番の折、亮輔を保育園に迎えに行くこともありました。
買い物の帰り、幼稚園から幼馴染の生島沙織(いくしまさおり)が出てきて、今度飲み会をやろうと誘われました。
そして、自宅方面に歩いているとまた地上げの嫌がらせか
ある家の玄関先に豚の頭が置かれていて、真っ赤になっていました。
地上げのせいで死んだ人のエピソード
①老女は生まれたときから西浅草に住んでいるのでこの土地から動きたくなかったが不動産会社は交渉役をヤクザに任せました。老女は家に閉じこもるようになり、熱中症で死んでしまいます。
②昼間仕事で夫がいない時間にヤクザが交渉にやってきていました。妻は妊娠中でしたが、ストレスにさらされ、流産してしまいました。
彩織から智士への相談:比奈子ちゃんの様子がおかしい。土地を売って引越したのだが、夫の和俊は仕事を辞めて毎日パチンコをしている。
小室翔の思い人が比奈子であることがわかった。
彩織も辰司がまだ好きらしい。
豚の首が投げ込まれた家は引越てしまいました。
昼間、派手なことがあって、目撃者も動機も明らかなのに、豚の首を投げ込んだ奴は捕まりません。
警察がわざと捜査を怠っているからではないかと思えてきます。
辰司は翔からも責められます。
第三部 亮輔と賢剛
亮輔は父の葬儀後、友人3人と酒を飲みました。
勝俣は小学校からの同級生で家業を継ぎ、地元に暮らしています。
英玲奈(えれな)と優美(ゆうみ)は姉妹で姉の方が同学年だが、気がつくといつも一緒に遊ぶようになっていました。
英玲奈は賢剛と付き合っています。
亮輔は親父が変わったのは賢剛のお父さんが死んでからだから
どうして賢剛のお父さんが死んだのか調べてみようと思っていると打ち明けました。
賢剛の捜査:「かげろう」の客 小林 「濱仲さんを何の気なしに見送ったんですが、店を出て左に行ったんですよ」
隅田川は右手にあることから、濱仲の行動をまた考える必要が出てきました。
亮輔の聞き込み:小室翔 父親の過去を調べるなんてやめろ
「やめておけ。これは忠告だ」
そう言われて締め出されるも
小室翔が好きだった女性の事件
小室翔が親しかった賢剛の父親智士の自殺
そして亮輔の父親辰司の死
繋がりはわからず徒労感だけ残りました。
賢剛と岸野は辰司の過去に殺人の理由があるかもしれないことも視野にいれました。
濱仲家のポストに「これ以上、かぎ回るな」という便箋に新聞の活字を切り貼りしたものが入っていました。
賢剛と岸野はすぐに駆け付けます。
賢剛の捜査:小室翔訪問
切り貼りの手紙は小室翔の驚いた顔から彼ではないと推測され、当日のアリバイを聞き、ひとまず去りました。
岸野は小室の本が、バブル当時の誘拐事件の本ばかりだったことが記憶に残ったと話しました。
亮輔はコーヒーを飲みながら育児放棄事件のファイルを読もうと家を出ますが、喫茶店は休みでした。
賢剛からメールがあり、合流しました。
小室翔がバブル期の誘拐事件の本をたくさん持っていたことを話すと、亮輔は親父もその誘拐事件の記事をスクラップしていたと話し、ふたりは絶句するのでした。
第四部 辰司と智士
智士は生島沙織から比奈子が逮捕されたと聞きました。
比奈子と仲がよかった咲ちゃんからの情報で比奈子が裕司ちゃんを死なせてしまい、警察に連れていかれてしまったらしいと聞いたのです。
辰司とは連絡が取れず、ひとまず次の連絡を待つことにし、
小室翔へは智士が連絡することになりました。
智士は辰司にも連絡をし、
辰司は比奈子が住んでいる東大和署を訪れました。
比奈子の赤ちゃんは餓死で胃の中に何も残っていません、夫の和俊は家に寄り付かなくなっていました。
比奈子は精神鑑定を受け、不起訴になるかもしれないが、何か月もかかるとのことでした。
和俊は目の下に隈を作り、頬も削げ、幽鬼のようでした。
(ここで完全に小泉という名前が出てきて、最初の部分と繋がりました。)
世間は天皇が体調不良になり、自粛ムードになっていきました。
そんな中、比奈子の不起訴が決まり喜んでいましたが、
翌日、比奈子が自殺したとの連絡が入ったのです。
小室翔は比奈子の夫和俊を殺すと怒り、それを智士はなんとかなだめようとしていました。
ふと辰司を見ると翔と同じような目つきをしていて驚きますが、
辰司の怒りがどこに向いているのかはわかりませんでした。
相談があると言われ、辰司は智士とふたりで飲むことになりました。
智士は不動産会社に復讐しようともちかけたのです。
智士と辰司、翔、彩織、彩織のおじいちゃんの道之介が仲間です。
地上げをやっている東芳不動産の課長の子どもを誘拐し1億円の身代金を要求するというのが計画です。
昭和64年1月7日、天皇が崩御されました。
辰司は犯行日に最も相応しい日がわかってしまいました。
天皇の葬礼の日です。
第五部 亮輔と賢剛
辰司と小室翔がともにバブル期の誘拐事件に関心を持っていたことが不可解でした。
賢剛は智士が誘拐事件に関わっていたのではないかと心配になり、
母親に大喪の礼当日、父親がどんな感じだったか探りを入れるのでした。
母親はぜんぜん覚えていないと言いつつも、おかしなことはなかったみたいなので、賢剛は安堵しました。
そもそも智士と東芳不動産との間には接点がありません。
亮輔に対する警告文に関して、小室翔が何かを知っているのではないかと
芦原智士の息子として話しを聞きにいくことにしました。
父親(智士)が自殺した時、辰司さんはどんな様子だったか聞くと、
「お前の親父の死は辰司さんにとってもおれにとってもその後の人生が変わる大事件だった」
なぜ父は死んだんですか
疑問をぶつけても
「俺は知らない
知っていたとしても口が裂けても言わない。墓場まで持っていく
お前は知らないほうがいいことだから」
賢剛は
父は何かをしたんですか、小室さんも仲間だったのですか、辰司さんもその仲間だったんですね
と小室翔に詰め寄り、
それが真相だと悟ってしまいました。
亮輔はさくらの喫茶店で警告文について考えながら、不意に
おれも智士みたいに潔く死にたいな
と父辰司が言っていたのを思い出してしまいました。
第六部 辰司と智士
大喪の礼は2月24日に執り行われることが決まり,
辰司も誘拐の仲間に入りました。
彩織は幼い頃から辰司が好きでしたが、
辰司は妹としか見れなくて佳澄と結婚しました。
それでも彩織は守らなければならない、そういう対象で、自分が仲間になることで彩織を守ろうと思いました。
大喪の礼 前日
辰司と彩織:小学校からマンションまでの道で小学生2人を車に乗せ、誘拐します。
車はレンタカーではなく道之介が調達してきました。
足がつかない知人から借りたということ、孫の彩織が乗るということで危険な要素はないと判断していました。
東芳不動産のマンションに暮らす子どもは3人でそのうち2人が小学2年生です。
この時間この道を通るのはこの2人しかいないと調べ済みです。
2人には睡眠薬を入れたジュースを飲ませ、眠ってもらいます。
ランドセルから2人の筆箱を取り出し、営団地下鉄東西線木場駅近くのロッカーに預けておきます。
そして空き地前の電話ボックスにロッカーの鍵をガムテープで貼り付けました。
それから1人の子どもの自宅に電話します。川嶋家です。
子どもを預かっていること、三橋さんの子どもも一緒だということ、
お子さんを返して欲しければ、子どもひとりに付き1億、合計2億を続き番号でない現金で用意しておくことを伝えました。
道之介と彩織の家に眠ったまま運びこみます。
子ども達は外側から施錠できるような部屋に泊まり、退屈しないような環境を
整えました。
大喪の礼 当日
日本中から動員された警察官が天皇のご遺体を収めた棺を警備しています。
最初は翔と道之介、
途中で道之介は智士と交代し、
身代金を手に入れました。
しかし、問題が起こってしまいます。
子どものひとりが死んでしまったのです。
智士が彩織に電話をすると興奮した様子で子どもが息をしていないと言っています。
智士は病院に連れていけというのですが、道之介が電話に出て、もう死んでいるのだから手遅れだと言うのです。
結局智士は救急車を呼ぶ電話もせず、彩織の家に戻りました。
お昼ご飯にグラタンを食べさせた後、具合が悪くなったということで、死因ははっきりしていません。
アレルギーが疑われましたが、そもそも特定はできません。
全員は悩みながらもひとりの子どもは無事に返し、もうひとりの子どもは死体で返したのでした。
第七部 亮輔と賢剛
辰司殺しと関係があるとして防犯カメラに写っていた男が別件で逮捕されました。
男は何の関係もありませんでした。
亮輔と佳澄の会話:
賢剛の父親が自殺した日、明らかに辰司は変でした。
風呂に2時間くらい籠り、何もかもを拒絶するような雰囲気でした。
辰司は賢剛の父親智士の自殺の原因を知っていたのではないか。
佐島を再度訪問:
金のせいで人生を狂わして子どもを死なせた人の話では、
辰司は事件そのものに憤っていました。
時代そのものに怒っていました。
警察官なのに何もできないことが歯痒がったのです。
佐島さんの家を出ると老人に呼び止められました。
「馬鹿げた真似はするなよ」
亮輔は怪文書を送ってきたのがこの老人だと気づきます。
賢剛と岸野は仕事の休憩で「チェリーブロッサム」を訪れました。
その後の捜査で山本という家の娘が殺人事件当日
辰司とチェリーブロッサムのさくらが話していたのを目撃していました。
亮輔は誰かと話したくなり英玲奈と優美の姉妹とチェリーブロッサムで会いました。
そして怪文書を送ってきた老人は江藤で奥さんや孫も亡くしていることを知りました。
さくらは辰司と当日会ってはいないと否定、山本の娘もそうでなかったかもしれないと言うのでした。
賢剛:お互いの父がバブル期の誘拐事件に関わっている可能性を考えてみました。
居酒屋勤務の智士はランチ営業があり、不可能だが、そもそも大喪の礼当日の営業はどうだったのか、警察官の辰司は確実に無理だと思われるし、やはり不可能な気がします。
誘拐事件では人質になった子どもの1人が死んでしまいました。アレルギーによるアナフィラキシーショックが原因だが、そもそも誘拐されなければ死ななくてすみました。
犯人グループは身代金を手に入れているはずなのに、賢剛は裕福とは言い難い環境で育ってきました。
仮に父が誘拐事件の犯人だとしたら、
父はもう死んでいて、自らを罰したと言ってもいい、死者に鞭打つのが、自分の役目だろうか。
と考えながら、岸野と合流し、防犯カメラの映像をチェックし、
さくらが午後10時過ぎ、隅田公園に向かって歩く映像を見つけました。
亮輔は鬱々としていました。
辰司が隠していた真実を突き止めても何をしたいのがわからなくなっていました。
さくらは任意同行されました。
さくらは黙秘を続けましたが、物証が出たことで逮捕されました。
ガサイレで押収した黒いコートの血痕が辰司のもとと一致しました。
さくらはバッグを振り回して、辰司の頭を殴っただけと主張しました。
辰司は自分から隅田川に落ちたとさくらは主張します。
岸野は殴られて隅田川に落ちたと考え、
さくらの主張の妥当性を考えていました。
「濱仲さんは罪の意識を覚えたんでしょう。それで、自分から川におちたんですよ」
「濱仲さんは人間のクズです。それを私が指摘したから、己を恥じて川に飛び込んだんです」
賢剛は亮輔を呼び出し、さくらの供述を話しました。
さくらには昔、すごく慕っている人がいました。実の姉のように思っていた。
そんな人が出産の際に出血がひどくて、命を落としてしまった。
その女性は結婚しているわけではなく、誰かの子を身籠ったんだが、相手の名は頑として口にしなかった。
妊娠がわかると西浅草を出ていき、ひとりで産もうとしていたそうだ。
でも、お産で命を落とし、子どもも死産だった。
結局相手が誰かは不明なままに終わったんだ。
さくらは相手の特徴を聞いていた。
胸に傷があったらしい。
でもそれだけでは相手を特定できず。30年近くに時間が過ぎた。
相手の名がわかったのはつい最近のことだ。
あの夜、偶然会ったさくらは死んだ女性の名前を出して問い質した。
辰司は人目を避けるために高架下を選んで、別々に隅田公園に行き、
さくらが改めて訊くと辰司は認めたため、バッグで殴った。
そうしたら、辰司は倒れ、柵を乗り越えそうになった。
ただ柵は二重になっているから手前側の柵を超えてしまっても川には落ちない。
さくらが言うには辰司は自分から川側の柵を越えて、隅田川に飛び込んだそうだ。
罪の意識を感じたからに違いないとさくらは言いきっている。
賢剛は、
これは偶然なんだが、その死んだ女性はこの前話しに出た人の孫で彩織という名前だったらしい。
亮輔はその女性が誘拐グループの一味で、何かの必然があったのではないかと考え、
小室翔の元を訪ねました。
さくらが彩織さんを慕っていて、父親不明の子を出産する時に亡くなったこと、その父親が辰司だったとわかったので、殴ったそうです。
小室翔はすべてを打ち明ける場所として、江藤の家を指定しました。
誘拐事件の後、人質の子どもが死んでしまったことで、
彩織さんと小室はお互いを必要としてしまった。
それは愛情なんかはない、ただ彩織と小室には誰かが必要だった。
彩織が妊娠して出産して死んでしまったことは知っていたけれど、
彩織が父親を明かさなかったのに、小室が言うべきではないと思っていた。
さくらは辰司が彩織のことを認めたので、なかなか納得できずにいたが、賢剛の話を聞いて声を震わせた。
亮輔と賢剛は最初から話すことにした。
犯人五人の名前
犯行の動機
事件の経緯
人質の子どもが死んだことで、五人の気持ちがバラバラになった
亮輔と賢剛の考え方に相違があった。
賢剛は情に溺れているようだった
ただ罪を責めるだけではなく罪を犯した人たちの気持ちを理解したい。それは間違っているのか。俺は甘いだけなのか。
亮輔は
おれはどうしても罪は罪だとしか思えない。自分の厳しさに自分で嫌になる。お前の方がずっと人間らしいんだよ。お前はいい奴だ。
俺は浅草を出ていく。
親父の罪を不問に付したまま、何もなかったように生きていくことはできない。
俺はお前の前から去る。俺達はもう、ぶつかり合わなくていいんだ。
十年だ。十年経ったらまた会おう。
父と賢剛の父親、どちらが誘拐を思いついたのだろう。
一方が相手を誘ったのは間違いないとして、その誘いに応じた気持ちが今はわかる気がした。
父たちも親友だったのだ。
警察用語
被害者:ガイシャ
捜査本部:チョウバ
警察官:サツカン
地取り:殺害現場周辺の聞き込み
鑑(かん):被害者についての調査
ブツ:物証
捜査令状:オフダ
家宅捜索:ガサイレ
感想 辰司
彩織の気持ちを知っていながら、交友関係を切りもせず、嫌な男です。
自分が好かれているのに優越感があるような感じがします。
妻の佳澄が納得している風でしたが、彩織との関係は危ないものにしか見えません。
確かに大喪の礼当日に身代金を受け取る計画にしたのは辰司にしか思いつかないことです。
それがあったので、少数精鋭の警察官など怖くないと言えたのでしょう。
この犯行は辰司と少しでも一緒にいたいからみたいな理由で彩織が犯罪に手を染めたのは悲劇でしかありません。
(そうは書かれていませんが、その線が濃厚です。)
田村夏恋(喫茶店さくらのママ)は勘違いして辰司に詰め寄ってしまいましたが、的は外していないと思います。
彩織の恋心を弄んだのは間違いありません。
さくらに彩織のことを問われて、認めてしまったのは、そのことが心の中にあったと思います。
自分は家庭があるからといって、犯行後は彩織のフォローをせずにほったらかしはないと思います。
彩織の気持ちはとっておいて、断ち切りもせず、弄んでいます。
死に場所に智士が自殺したところをわざわざ選ぶところも、ひとりよがりです。
息子亮輔がもう大人だとしてもそんなことで命を落とさずに寿命を全うして欲しいです。
死なせてしまった人質に対する供養の気持ちがあれば、できるはずです。
一生苦しまなくてはなりません。
感想 智士
なぜに智士は正義感を振りまいたのか知りたいところです。
人との争いは避けて、自分が我慢することで、その場が収まればその方がいいと思う人間だが
他の人のためなら強くなれる、
人のためならばと、義憤にかられ、誘拐事件をやろうと言いだしてしまいました。
小室翔をなだめるためなら、他に方法があるはずです。
妻の若菜と息子賢剛は記憶から消えていましたね。
誘拐した子どものひとりが死んだからといって、自殺することで、おさめるのも違いますね。
先に死んだ方が後からいろいろ後悔しないで楽です。
ずるい奴です。
感想 小泉夫婦(比奈子と和俊)
地上げ屋に追い出された時に見返りとしてお金をもらったら、それでいいではないですか。
なぜに知らない土地に引っ越すのですか。
浅草の賃貸物件に住めば、環境もさほど変わらず生きていけましたよね。
一度にお金を手にしたからといって、仕事を辞めてしまうのもクズです。
そして、夫がそうなったからといって、自分も精神を病んでしまう妻もしっかりしてください。
夫婦ふたりで病んだら、子どもは死んでしまう。
お金があるだけ幸せなのに、なぜにそれに気がつかないかな。
地上げ屋のせいだけではありません。
この夫婦は西浅草にいたとしてもうまくいかなかったでしょう。
感想 濱仲亮輔
運が悪いと父親に言われてきました。
父親辰司は「自分は誘拐事件の犯人だが、捕まらないで生きている」って遠回しに運がいいって言っているのか?
無職で暇だったからこそ、父親の過去を探求できました。
亮輔は地元出身ではない母親佳澄を母に持っていることから、
ちょっと違うことに気がついたのかもしれないと私は考えます。
彼が真相を突き止めました。
感想 芦原賢剛
警察官としての資質を問われる需要な今後です。
賢剛はこれからどうするのか、小説には書かれていません。
亮輔の方が罪に厳しかったので、
岸野には真実を知らせず、隠蔽するかもしれません。
さくらの証言から辰司は自分で隅田川に落ちたのですから、事件性はないはずです。
どうして落ちたのか、それは彩織が絡んでくると辰司の妻佳澄は何を思うのか。
辰司は死んで楽になりましたが、小室翔と道之介はどうするのか。
同級生の英玲奈とは結婚して欲しいです。
感想 小室翔
そもそも比奈子を思い続けてきただけの自分に後悔してください。
自分が夫だったら、比奈子は死なないですんだのだと考えたとしたら、それは違います。
数々の小説映画漫画を読んだり、観たりしましたが、結局結末は同じになる方が多いのです。
濱仲辰司を思い続けている女性を抱いて、どうでしたか?
悲しみが薄まるというより、もっと自分が嫌になりませんでしたか?
それは単に欲望のはけ口になったに過ぎないと思います。
20年思ってた比奈子が自分の子どもを殺し、自殺してしまったのは夫和俊だけのせいではないです。
ただ、事件を起こすきっかけになってしまったのは悲しいです。
感想 生島彩織
濱仲辰司を思い続けてしまい、そのことが自分の人生をつぶしてしまいました。
気持ちというのはなかなか踏ん切りがつきません。
辰司が存在しなければ、良かったのに。
誘拐事件では辰司と一緒にいられるだけで、嬉しかったはず。
本番は緊張したかもしれませんが、彩織が手伝わないと成功しない計画のため、辰司のため、頑張りました。
誘拐した子どもはあなたの作ったグラタンでアレルギーを起こし死んでしまいました。
精神崩壊するのは仕方がありませんでした。
辰司自身は智士が自殺してしまい、何も知らない家族と生活しなけらばなりませんでした。
あなたはほったらかしにされてしまいました。
辰司は自分の家族と賢剛と智士の妻だけは守ったのかもしれません。
彩織には道之介おじいちゃんがいるからいいと思ったのかもしれません。
あなたの気持ちを知っていながら、あなたを守るということで誘拐事件に参加したのに、ひどい男です。
さくらの言うことは間違ってなんていません。
小室翔だけは相手に選んではいけませんでした。
辰司は小室翔とそういう関係をしていたということを知っていたかもしれませんね。
かわいそうです。
感想 田村夏恋(さくらかれん)
幼い頃優しくしてくれた生島彩織が大好きでした。
結局かれんは彩織が喜ぶことをしてくれました。
辰司を彩織の元に行かせてくれたのです。
辰司に自分の罪を思い出させたのです。
辰司は守ると誓った彩織をほったらかしにし、死なせてしまったのです。
かれんは辰司をも救いました。
辰司は楽になりたかったのです。
智士が死んだ場所を選び、そこにかれんに来てもらいました。
辰司は潔く死んだつもりかもしれませんが、
私からしたら、逃げたと思います。
感想 道之介
彩織の祖母の再婚相手なので血縁関係はありませんでした。
道之介は下町出身とか何者なのかわからずじまいでした。
老人になっても西浅草に住んでいるし、そこに愛着を持っているのだと思います。
まとめ
1980年代、浅草の六区と呼ばれるところに新しいビルができました。
浅草ROX
住所は浅草1-25-15
嬉しくて何回も行きました。
浅草ビューホテル
住所は西浅草3-17-1
こちらも嬉しくて何度も訪れて、ご飯したりお茶したりしました。
現在は経営が当時とは違うと聞きましたが、
出来た当初は会員募集していました。
両親は最上階のエグゼクティブルームに宿泊したりしてて、喜んでました。
勝手に考えました。
もしかしたら、少し事実も入っているのかなと。
発展というのは誰かの犠牲の元に成り立っています。
都市部だけにとどまらず、田舎でもそういうことがあります。
ダムの建設です。
都会のビル建設よりも立ち退く家々は少ないかもしれませんが、慣れ親しんだ土地を離れるのは誰もが好まないのです。
飛行場の建設もそうです。
あまり深く物事を考えない性格です。
以前ここがどういったところだったのか覚えていることも必要なので、
地域ごとに歴史民俗資料館等があるのだなと思います。
現在の地域には結婚してから住んでいますが、かなり様変わりしました。
自分がくたびれてきたので、新しいものが建つとなんだか取り残されているような気がします。
お読みいただきありがとうございました。
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