ラストシーンで流れる薬師丸ひろ子の「メインテーマ」が刺さって、
思う存分泣ける。
日常生活でふと感じる幸せって地味に夜を照らす月みたいだなって思った。
平場の月とは
特別な場所ではなく日常の中で見上げる月を表わしている。
主な登場人物
堺 雅人:青砥健将:印刷会社勤務、離婚して一人暮らし
井川 遥:須藤葉子:離婚して一人暮らし
あらすじ
青砥は妻と別れ、地元に戻り平穏な日々を送っていた。
病院で診察の帰り、売店で中学時代の同級生須藤と再会する。
ふたりはLINEを交換し、
愚痴とか無駄話を時々語り合おうと約束した。
互助会みたいなもの
そして少しずつ心を通わせるようになった。
須藤は大卒後証券会社に勤務、結婚。
その結婚はDVの相談をしていた友人の夫を奪う略奪婚だった。
夫が死んだ後、今度は若い美容師に入れ込み、最後は家を売って全部お金を使い果たした。
死場を求めて地元に帰ってきたのだ。
青砥は離婚の前後でアルコール依存症気味になったと打ち明けた。
須藤は検診で大腸がんが見つかり、手術と抗がん剤治療を受けることになった。
青砥は須藤を支え、2人の関係は深まっていった。
入院中、青砥は須藤にネックレスをプレゼントし、青砥はそれを受け入れた。
須藤の誕生日12月20日近くになり、
青砥は温泉に行こうと誘うが、須藤は1年後と約束した。
そして、須藤に6ヶ月検診はどうだった?と聞くと指でピースを出した。
(異常はなかったと青砥は受け取った。)
その夜、誕生日に指輪を買わせて欲しいというプロポーズに
須藤は別れてくれと断るのだった。
それ言っちゃいけないやつと言った。
しかし、1年後の温泉旅行の約束は守ると理解した青砥は
一時的に連絡を絶つことにした。
(須藤の気持ちを尊重しようとしたんだ。)
そしてまた12月になった。
須藤に出したLINEは既読にすらなっていない。
会社の昼休憩、共通の同級生から
須藤が先月死んだと聞かされた。
驚いた青砥は須藤のアパートに行く。
須藤の妹が部屋の片づけに来ていた。
「青砥、検診行ったかな。」それが最後の言葉になったと知った。
その夜、同僚の昇進祝いがあった。
須藤とよく行っていた焼き鳥屋さんだ。
ビールのおかわりをもらう時、ふいにラジオから薬師丸ひろ子のメインテーマが流れる。
須藤と青砥が再会後はじめて焼き鳥屋さんに来た時、流れた曲だった。
青砥は嗚咽した。
店主がラジオのボリュームを少し上げた。
薬師丸ひろ子さんのメインテーマがしみる
ぜひ若い時の歌声を聞いて欲しいと思った。
薬師丸ひろ子さんは今もアーテイスト活動をされていて、歌声は円熟味を増した。
けど、居酒屋で流れた歌声は青砥と須藤が若い時に聞いた若い時の薬師丸ひろ子さんの歌声だ。
私も若かった。
感想
中学時代、須藤の家庭は荒れていた。
若い男に入れあげた母親が家出した。
だが捨てられて戻ってこようとし、父親に追い出される。
須藤はそんな母親が大嫌い。
そんな母親を許そうとしている妹が嫌い。
好きな男ができると自分のものにしようと突っ走る自分も嫌い。
だから青砥のプロポーズを断る。
だが青砥はそんなこと大したことじゃないと引かない。
自分の病気の進行もわかっていた。
青砥の気持ちを受け入れたくてもそれを拒否してしまう悲しさ、
ああ、中学時代好きだった男子が自分を受け入れてくれただけでもう十分だと思ったのだ。
これ以上、ガン末期の自分の介護にかかわらせたくないと思ったのだ。
須藤がアパートの窓際に腰掛け、月を眺めていた。
平場の月だ。
「お前、あのとき何考えてたの?」
「夢みたいなことだよ。
夢みたいなことをね、ちょっと」
須藤は中学時代、ひとりで生きていくと決めていた。
だから男子の告白も断ってきた。
私だったら、
中学生に戻って、好きだった青砥の告白にOKって言う。
夢みたいなことだね。
太陽って眩しすぎるから見ない、
だけど月はたまに見る。
平場の月の意味がわかったから、時々は月を見て
遥か昔のことを思い出すのも悪くないなと思った。
私は主人が泣いてくれるだろうけど、
須藤、青砥が泣いてくれて良かったね、
お読みいただきありがとうございました。
