ドライブ・マイ・カー ///何度観ても見飽きない傑作。 西島秀俊・三浦透子・岡田将生・霧島れいか・ソニアユアン

赤いフェラーリ 映画鑑賞

ひとりの男が立ち直っていく物語です。

7回、観て、この映画の魅力に深くハマりました。

特にチャプター7は何度観てもいい。

岡田将生さん演じる高槻がいうセリフに痺れます。

村上春樹さんの原作から、この監督がこう作ったのか!と

お見事です。

あらすじ

Wikipediaをお借りしました。

ざっくりと知ってください。

ドライブ・マイ・カー (映画) - Wikipedia

感想は1回目2回目3回目~観たのとだんだん変わってきました。

あらすじ①

家福音ーかふくおとー(霧島れいか)が裸で語り始めます。

物語

「山賀の家に空き巣に入る。」

同級生である山賀を好きになった女子が

誰もいないその山賀の家に入り、物色をし、

入った印に男子の物をひとついただいて、自分のものをひとつ隠していきます。

音(霧島れいか)はセックス後と思われる裸でそれを語りだします。

次の日、彼女はそれをほとんど覚えておらず、

夫の悠介(西島秀俊)に教えてもらう形でメモを取ります。

音はその方法で脚本家として賞を取り、現在活躍しています。

ある日、

悠介(西島秀俊)が出張で家を出た後、

音は自宅に男を連れ込み、セックスをしていました。

悠介は滞在先の天候悪化のため、飛行機が飛ばず戻ってきたのでした。

それを目撃してしまいます。

その後も夫婦は仲良く過ごしています。

関係が変わるのが怖くて、問いただすことができません。

悠介が出演する「ワーニャおじさん」を観にきた音が

俳優の高槻(岡田将生)を紹介します。

高槻はそこそこ名前が知られている役者です。

2人が帰った後、

なぜだか悠介はイラつき、衣装を投げつけます。

音がセックスの最中やセックス後に物語を言うのも

夫婦の日常として続いていきました。

物語

山賀の家に空き巣に入っていた女子のことを

「彼女の前世は高貴なヤツメウナギ」と語っています。

その日空き巣に入った女子が山賀のベッドでオナニーしていたところ、

誰かが2階に上がってくる気配がしました。

父親か母親か同級生か。

わからないまま、その語りは終わります。

翌日、音が悠介に何を語ったか聞きますが、

眠くて覚えていないと答えます。

覚えていないと言ったのは嘘だと思われます。

悠介のPCにはヤツメウナギが映っています。

2人には子どもがいましたが、幼い頃、肺炎で亡くしています。

 「今晩少し話せる?」

出がけの悠介に音が聞きます。

悠介は当てもなく車を走らせ、帰宅を遅らせました。

家に帰ると音が死んでいました。

クモ膜下出血でした。

あらすじ② 2年後

広島で行われる演劇祭に参加するため、悠介は車(サーブ900ターボ)を走らせます。

演目は「ワーニャおじさん」です。

悠介は俳優をやめ、演出家になっていました。

主催者の方針で悠介にはドライバー渡利みさき(三浦透子)がつきました。

最初こそ、ドライバーを拒否しましたが、

みさきの運転する自分の車は快適で乗っていることを忘れるくらいになりました。

悠介がどうやって運転を覚えたかとみさきに問います。

みさきは

中学生の頃、母親から運転を教わり、その時の母親は優しかったこと、

最寄り駅まで、毎日母親の送り迎えをしていたこと、

母親は車の中で睡眠を取るため、みさきの運転がそれを少しでも妨げるとひどく怒り、

後ろからけられたこと、

など話しました。

ワーニャおじさんのオーディションに

高槻(岡田将生)も参加し

高槻はワーニャを演じることとなりました。

高槻は考えるより行動に移すタイプらしく、

顔が売れる俳優になったのに、女性問題(未成年者)で失脚し、現在はフリーで役者をやっているということでした。

悠介は音と関係した男のひとりではないかと思っています。

あらすじ③ ワーニャおじさん

チェーホフの演目「ワーニャおじさん」を俳優たちが練習します。

多言語演劇という特殊な手法です。

韓国語・日本語・手話でそれぞれのセリフを語ります。

悠介は高槻に誘われ、ホテルのバーで飲んでいました。

シャッターの音がし、

高槻は盗み撮りされたと激昂し、相手につかみかかります。

悠介は会計を済ませ、先に出てきてしまいます。

別の日、悠介は

朝、「ワーニャおじさん」の共演女優と同じ車にいる高槻を目撃しました。

左折したところで、その車は追突事故を起こし、遅刻して練習に参加します。

悠介はやんわりと諭すだけにとどめました。

稽古も進み、役者らも手ごたえを感じてきたところ、

高槻と飲む機会がありました。

高槻は

自分はこの劇で場違いな気がする、

ボクは空っぽ、僕には何もない、テキストにそう問いかけられている気がすると話します。

悠介は

君は自分をコントロールできない、

社会人としては失格、

でも役者としてはどうだろうか

相手役に自分を差し出すことができると思う。

そこで、また盗撮されます。

高槻はそこでもシャッターを切る人間に容赦なくつかみかかろうとしますが、

悠介に諭されます。

先に外で待っていた高槻はまた写真を撮られ、

相手を追いかけていきました。

少したって、何事もなかったように戻ってきます。

あらすじ④車の中

みさきの運転で送ってもらう中、

悠介は音との生活と前世がヤツメウナギの女の子の話をします。

僕と音との間には子どもがいて4歳で死んでしまった。

生きていれば23歳。

幸せな時間は終わってしまった。

ある日、僕とのセックス後、音は語り始めた。

記憶はおぼろげで、

セックスすると時折それは訪れた。

悠介が覚えていて、音にそれを話す。

それは習慣になった。

セックスと彼女の物語は繋がっていて

娘の死を乗り越えるために必要だった。

音には別に男がいた。

彼女は自然に僕を愛しながら、裏切っていた。

彼女の中にどす黒い渦みたいななものがあった。

そこで、

物語

女の子がオナニーをしている時、誰かが2階に上がってくる。

「父親か、母親か、山賀か」

続きを話す前に音は死んでしまいました。

高槻は続きを知っていました。

2階に上がってきたのは

もうひとりの空き巣でした。

全裸に近い女子高生を襲おうとしますが、

彼女は全力で抵抗し空き巣を殺してししまいます。

彼女はシャワーを浴び、山賀の家を後にします。

彼女は自分のやったことを償う気持ちでした。

しかし

翌日になっても、何も変わりませんでした。

その翌日も何も変わっていません。

変わったのは山賀の家に防犯カメラがついたことだけです。

彼女は監視カメラに向かって

「わたしがころした」

「わたしがころした」

「わたしがころした」

とゆっくりとした口調で言うのでした。

高槻は

僕は空っぽなんです。

僕には何もない。

テキストにそう問いかけられているように感じます。

音さんの脚本にもそれは感じていました。

自分の心と上手に折り合いをつけてください。

他人の心を覗くのは無理。

本当に人の心を知りたいのなら、

自分自身を深くまっすぐ見つめることが大事。

僕はそう思う。と語ります。

高槻をホテルで降ろした後、

みさきに煙草をすすめ、

サンルーフを開けて、

手を高く上げて

煙突のように煙草を突き出します。

とても良いシーンです。

舞台稽古の時、

高槻は傷害致死で逮捕され、

悠介は舞台中止か自分がワーニャを演じるか2択を迫られます。

2日、時間をもらい、考えることになりました。

あらすじ⑤北海道 上十二滝村

赤いサーブはみさきの運転で上十二滝村を目指します。

ターボエンジンの音が心地よく聞こえてきます。

途中フェリーに乗り、

道中悠介とみさきは

僕は妻を殺して

君は母親を殺した。

と語ります。

みさきの住んでいた家はガレキの残がいがあるのみでした。

煙草をお線香代わりに立てて、みさきが語ります。

母親には別人格「サチ」8歳ーがあった。

みさきに対してひどく暴力をふるった後にそれは現れた。

みさきが

14歳から4年間現れたけれど、サチは年をとらなかった。

サチは知恵の輪やクロスワードパズルが好きだった。

母が病気だったのか、私をつなぎとめるための演技なのかわからなかったけれど

私はサチが好きだった。

母にとっては地獄みたいな現実を生きるすべだったのかもしれない。

みさきは

音さんが家福さんを心から愛したことと他の男性を求めたこと、両方とも受け入れることはできないかと問います。

悠介は

僕は

正しく傷つくべきだった。

傷ついていたのに見ないふりをしていた。

自分自身に耳を傾けなかった。

今、わかった。

だから音を失ってしまった。

生き残ったものは死んだもののことを考え続けて生きていかなくちゃ。

どんな形であれ、生きていかなくちゃ。

僕たちはきっと大丈夫だ。

悠介はみさきを抱きしめました。

あらすじ⑥ 広島国際演劇祭

「ワーニャおじさん」の舞台。

なんてつらいのだろう。

生きていくほかないの。

ワーニャおじさん、生きていきましょう。

長い夜を生き抜きましょう。

わたしたちは苦しみました。

泣きました。

つらかった。

そうしたら、神様は私達を憐れんでくれる。

最後は静寂の中、手話のセリフが心に突き刺さります。

感想 1回目

「死」は人間を変えてしまうと思います。

妻の秘密を知ってしまった夫。

「今日話があるから」と言われたその日に妻はクモ膜下出血で死んでしまいます。

ではなぜ妻は夫を愛しているのに愚行に走ってしまったのでしょう。

昔、夫婦には娘がいたのに失ってしまったのです。

ここで心を病んでしまったのだと思いました。

自分の子どもが幼い内に死んでしまうことは想像に耐え難いです。

だから、妻は普通の神経を保つために愚行に走ったのだと思いました。

男性になったことがないので、真意はわからないけれど、

産んだ母親の方が、自分の子どもが死んだ時、ショックが多いのではないかと思いました。

これは想像です。

自分の肉体に喜びを与えることでしか、子どもが死んだという現実を忘れられなかったのかと思いました。

セックスでの喜びの最中は現実を忘れることができたと思いました。

ただ、同じく子どもを失った夫の立場にたってみると、

悲しみは二人で分かち合い、乗り越えてきたものだと思いました。

だから、死ぬ前も死んだ後も

どうしていいのかわからなくなっていました。

1回目の率直な感想でしたが、

「生」と「性」は切ってもきれないものです。

悠介が語っているように、音は子どもを失ってから普通に生活するくらいまでになれるのに

「性」を利用するしかなかったのだと思います。

どす黒いウズみたいなものをなんとか抹消するために

もっとどす黒いことをしなくてはならなかったのかもしれません。

これは肯定はできませんが。

感想 2回目

原作が村上春樹さんのものというのは有名です。

短編小説集の「女のいない男たち」から

「ドライブ・マイ・カー」

「シェラザード」

「木野」

という作品を織り交ぜて1本の映画にしているそうです。

脚本は濱口竜介監督と大江崇允さんです。

盛りだくさんな内容もうなづけます。

家福悠介(西島秀俊)と妻の音(霧島れいか)のセックスシーンがあるのですが、

音はセックスの最中に脚本のインスピレーションが沸き、それを語ります。

悠介が覚えておいて、後でそれを話してあげます。

内容も面白いものでした。

女子高生には好きな男子がいます。

共働き夫婦で昼間は誰もいない男子の家に無断で入り、ちょっとだけ自分の痕跡を残していくという話でした。

音は続きを語る前に死んでしまいますが、

その続きは音の浮気相手高槻(岡田将生)から聞くことになります。

音の浮気相手としては半信半疑でしたが、このことで完全にセックスをしていたということがわかりました。

2回目も音が他の男性と肉体関係になるのが許せないのでした。

どんなに深い悲しみがあろうとそれは駄目です。

感想 まとめ

高槻(岡田将生)が車中で語るところは何度観ても良いです。

高槻は逮捕されて、罪を償うのだけれど、自殺してしまわないか心配です。

家福は音に

カセットテープに相手役のセリフを吹き込んでもらいそれで練習していました。

音が死んだ後も悠介はそれを聞き続けます。

霧島れいかの声は個人的に好きです。

ノルウェーの森にも出ています。

悠介は

チェーホフの「ワーニャおじさん」で脚光を浴びたものの、

自分を差し出すこと

というテーマを演じきれず、2年後は演出家になっています。

音が語るカセットテープのセリフ

音が語る寝物語

「ワーニャおじさん」劇中のセリフ

みさきの語るあれこれ。

実際の物語

それで1回目はこんがらがってしまいました。

でも全部繋がっている、そうわかったことで

全体が面白くなりました。

悠介がワーニャを演じる舞台の最後、

手話で力強くセリフをいうところは特に感動しました。

大事な人を失ったことがある人はきっとわかると思います。

生きていくしかないんだ。

というメッセージを感じました。

映画の中、サーブのエンジン音だけが流れるシーンも良かったです。

物語の野外稽古の時には平和記念公園が使われました。

最後、みさきは韓国にサーブとともに渡ったのでしょうか。

悠介からサーブを譲り受けたと勝手に思いました。

みさきは母親死後、北海道から広島まで来たところ、

車が故障してストップしていました。

悠介と故郷、上十二滝村へ行き、禊を果たし

もっと南下して韓国に渡ったのか、

元々母親の出身地なのか

考えました。

みさきの左頬にあった傷が消えていました。

韓国は美容整形もお安いから、韓国に渡ったのか、全部想像です。

音の死から2年後でしたが、

親しい人の死から立ち直るのに1番必要なのは年月だと私は思います。

悠介はまだまだ時間が必要でした。

みさきは23歳になっていて、母親の死から5年たっています。

みさきの方が悠介に立ち直るきっかけを与えていたのではないかと思いました。

3時間の長編ということを感じさせない映画でした。

お読みいただきありがとうございました。

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